こんにちは、新米海女のリッチャンです。
前回のブログの続き、みっちゃんの頭の中の解説・補足をします。
まず初めに、改めてですが、海女のみっちゃんは架空の人物ですので!悪しからず!
さて、みっちゃんが言っていた「ええ子やけど・・・」と言う台詞。
個人的に嫌いじゃない。
けれど、コミュニティーの一員として考えた時に、何か引っかかるものを新人海女に感じる。
例えば、新人海女募集の件。
これは結構色んな海女さんが言っています。
「自分たち(海女)に相談もなく決められた」
というのが気に食わないし、納得いかない。
別に新人海女が来ることについてはみなさん割と理解があるし、来てくれた子に対して感謝の気持ちもある。助けてあげようと思っている。
けど、海女って絆で繋がった女性の集団。
要は家族みたいな存在です。
ある日家族で夕食をしている所へスーツを着た男性と見知らぬ女の子が来て、男性から
「この少女を育てて下さい。今日からあなた達の家族の一員です。よろしく。」
と言われたら、
びっくり仰天!
じゃないですか?
海女:「え?ちょ、待って下さい。誰ですかこの子。聞いてませんよ。」
男性:「この子は未来の希望です!大丈夫、サポートしますから!」
海女:「えーーー!!?」
少女:「(キラキラお目目で)よろしくお願いします!頑張ります!」
海女:「あ・・・どうも。よろしくね・・・(って、誰ー???)」
もしかしたら市役所も町内会も海女さんに事前の相談があったかもしれません。
でもたぶんその海女さんが海女さん全員に話をしていなかった。
上記のシチュエーションだと、家族の中で一番寡黙なお父さんだけが知っていて、OKしていた。
みたいな感じ。
お母さんはじめ、子供たち全員びっくり!
一生懸命で一人ぼっちの少女をみんなで気遣って世話する一方で、何かやっぱり腑に落ちない所がある。
「反対はしないけど、先にひとこと言ってよ・・・」
この気持ちがずーっと残ってる。
そして、Aちゃん、Bちゃん、Cちゃん。
どれが誰とか考えないでね?(笑)
地元出身者じゃないので、何となくまだ「よそから来た人たち」。
何か至らない点があってもストレートにお説教もしにくいから、何となく言いづらいし、変に気を遣う。
地元の子だったらその親や親戚に「あの子のアレはいかんぞ。ちゃんと注意しておいてよね?」と言えるのですが、それが出来ない分、モヤモヤしちゃう。
で、女性のコミュニティーあるあるで、そのモヤモヤを井戸端会議でシェアしちゃうんですよね。
すると「へえ、あの子ってそんな子なんだ」と、普段あまり接点のない人にまで悪い方の噂が強調されて出回ってしまい、何だか変なイメージを持たれてしまうんです。
まぁ、そんなの気にしなきゃいいのですが、
時々このせいでちょっとした嫌がらせを受けたり、全然知らない人から避けられていたり、「???」な事が起こります。
コツはとりあえず
『会ったら誰にでも元気に挨拶』
これに尽きると思います。
街で暮らしていた事があると知らない人に声をかけるのって、ちょっとというか、かなり違和感がある。
けれど、田舎においてはそれはマズイ!
会ったのに挨拶をしないでいると、
「無視された」
「感じが悪い」
「お高く止まっている」
という風に捉えられます。
そんなつもりじゃなくてもね。
しかもお年寄りで耳の遠い方も多いので、恥ずかしいくらい大きな声で、土地の方言をしっかりと真似して
「おばちゃーん!おはようッ!!ええ天気やねッ!!」
と叫ぶ(もう叫んでる)のが大事。
かなり距離があったり、誰かと話をしている最中だったり、車を運転していてすれ違う時だったり、声を掛けれない時がありますよね。
そういう時は、
【満面の笑顔で手を振る】
これが効きます。
私は最初、挨拶が下手(?)で、よく手を振ってました。
こっちの方が恥ずかしくないから。
でも無言でニコニコと手を振ってると「なんだお前、ニヤニヤして(笑)」と、逆に向こうが話しかけてくれることも。
「えー別にー(笑)Kさんに会えて嬉しいから?」
なんて変な冗談を言いつつ
「アホなことばっかり言って!(笑)ほんまにあんたは、しょうもない子やな」
とかまってもらえる。
下心でやっている訳ではありませんが、まだ知っている人が少ないうちは、こうやって話す機会を作っていくのも大事だと思います。
あまり話した事がない人でもやっぱり「あの新しい子は、どんな子なんだろう?」と興味を持ってくれています。
そこに尾ひれの付いた変な噂が出回ると私たちの事を直接知らない人などは「感じの悪い子なのか。関わらないでおこう」と距離を置かれてしまう事も。
でも、例えそうと知らず 「おじさんおはよう!その帽子カッコイイね!」とこちらから挨拶をしていけば(あれ?聞いていた話と随分印象が違うな)と、イメージを修正して頂ける可能性が出てきます☆
そもそも、【海女】というライフスタイルに憧れて、都会での便利な生活を捨てて、家族も友達もいない土地に身一つでやってくる若い人たちにそう性格の悪い人はいないと思います。(自分で言っちゃう!?)
だから、コミュニケーションさえ取れればちゃんと伝わると思います。
ただね、新入りが来る(人が増える)と自分の取り分が減っちゃうと思う海女さん。
こればっかりは難しいです。
年を取って体力が落ちてきたのをなにより自分たちが一番よく分かっています。
だから体力もあって時間も未来もある若い人たちがやってくることは、高齢の海女さん達にとっては恐怖だと思います。
例えば「みっちゃん」の場合、
彼女は今72歳。
体力的にも海女が出来るのはせいぜいあと5年から長くて10年。
その間、地球温暖化による水温の上昇、
海の汚染による磯焼け(海の砂漠化現象)、
アワビやサザエが繁殖しにくい環境ができてしまい
年々漁獲量は下がる一方・・・
獲れる魚貝類が減ってきているのに、若い人たちに磯場を取られてしまうなんて最悪じゃないですか。
いやもう本当、気持ちすごい分かる!!
(でも、そんなワガママ言っちゃいけない。若い人たちを育てないと)
という気持ちも、みんなちゃんとあるんですよね。
だから海女さんみんな、心の中で葛藤しているみたいなんです。
意地悪な事言っちゃってる自分を嫌だな~と思っているし、けどそれが本心だから無視できないし。
自分たちも若い時は先輩海女さん達に面倒を見てもらった。
だから今度は自分たちの番。
それは分かってる。
分かっているけど・・・!
【頭では分かっているけど心がついていかない】
傍から見ていて、すごくかわいそうだなと思います。
もうさ、市役所とか国は、新人海女さんだけじゃなくって
先輩海女さん達にもおこずかいあげてよ。
伝統文化の後継者教育費用 として。
『後輩を育ててくれてありがとう』
ていうの、ダメかな?
そうしたら快く後輩育成頑張るんじゃない?
安易すぎるかな。
漁業界隈を取り巻く、この排他的で保守的な雰囲気って
「誰かに盗られたくない」
っていう気持ちから、変に力が入っちゃってる状況だと思うんです。
誰かを受け入れる余裕なんてない。
一流の海女さんはそういうとこ、目もパッチリ開いて未来を見ているし、「よく来たね」と大きな心で受け入れてくれます。
けれど多くの人はそうじゃない。
人って欠乏感があると利己的になります。
他人の事なんかかまってられないし、いかに自分が損をしないか考える。
だからまずは「満たしてあげる事から」じゃないかなと思います。
生活の心配をしなくていいとなれば、もうちょっと心に余裕ができるんじゃないでしょうか。
例え自分の獲るアワビの数が減ったとしても、そんなに他人を羨んだりしないじゃないと思います。
自分のとっておきの磯場のいくつかを後輩の海女さんに譲ったとしても、彼女たちの頭の中にはまだ【黄金の海底地図】がある。
「自分はもう年だし、獲りやすい所のアワビを獲ればいい。難しいポイントはあの子に譲ってあげよう」
そんな風に考えるようにならないかな。
なんてことを考えます