先日の海女漁でのこと。
『波酔い』のため入水後30分ですでにグロッキー。
頭痛、吐き気、あとは手の震えとオンパレードでした。水温がグッと下がり、夏用のワンピースタイプのウェットスーツでは海水がごぼごぼ入って寒かったです。そのせいもあって、漁に身が入りません。全然集中できない!
なかなか思うようにアワビが獲れず、朝の1本目の漁で黒アワビを1つ、2回目の漁で1つとまだ合計2つしかアワビが無い状態。
「せめてあと1つあれば水揚げ出来るのに・・・」と気持ちは焦りますが、もう体調が悪いし気持ちも乗らないしで、早々に漁を切り上げようとしていた時の事。
帰りがけにお師匠のターコバアの側を通りかかると、どうやらアワビを獲る最中だったらしく
「オンビ(=アワビ)獲ったか?ないんか?そしたら、ほれ、ここのを獲れ」と自分がたった今見つけた海中のアワビを譲ってくれようとします。
しかし一方で私の頭の中はもう「岸に上がって休みたい」のみ。せっかくの師匠の厚意もありがたいどころか、「今日は勘弁してください」と言う感じ。
ごめん、もう無理、上がるわ・・・と弱弱しく泳ぎだそうとする私を制止して、
「分かった、じゃあ代わりにワシが獲ったこのアワビを持って行け」
と、自分のスカリ(網袋)に入っていたアワビを2つ掴み、ぐいぐいと私に押し付けてきます(本当に押し付けてくる)。
「いい、大丈夫。ありがとう。もう行くわ」
と断り、今にも吐きそうになりながら泳いで行こうとしますが、お師匠もこうなったら意地でも私にアワビをやりたいのか(?)、段々と離れて行く私に相変わらず「こら!待たんか!受け取れ!!」と怒ってきます。
困ったなぁとチラチラお師匠の方を振り返りつつ、「ごめん、もう行くから」と何度も謝ります。
するとターコバア、「ほやっ」と一声かけたかと思うと、いきなりその2つのアワビをポーンと私に向かって投げてよこしました。ギョッとして見ると案の定、私の元に届くはずもなくアワビはお師匠と私の間の海にドポン。
びっくりして慌ててアワビを拾いに海に潜り、なんとか海底に無残に転がったアワビたちを発見、無事に回収できました。
プハーッと海面に上がると、私の手にあるアワビを見て満足そうなターコバアの顔が。
「ほや!あんたが受け取らんから!!」
と言い捨てて、またアワビを獲りに海中に消えていきました。
なんなんでしょう、あのおばあさん(笑)アワビ見つからなかったらどうする気だったのかしら。やれやれです。我がお師匠ながら、本当にターコバアは何をしでかすか分かりません。姉のサチバアもこういう所はそっくりですが、この姉妹は本当に私の想像を超えてゆきます・・・
優しいんだけど、愛情が雑だなーと思った一件でした。
<サチバアの優しさの表現がおかしいと思った過去のブログ>