こんにちは、リッチャンです。
海女が潜る際に着用する【磯メガネ】。
最近では私たちのような若手の海女は【ゴーグル】を使う事もありますが、石鏡の先輩海女さん達は『城山式』と呼ばれる伝統的な素潜り用の磯メガネを今も使用しています。
そんな磯メガネですが、そのまま使用したのでは水中でメガネの内側が曇ってしまうため、入水前に【曇り止め】を使います。
ツワブキとヨモギ
石鏡では昔から、野草を使った曇り止めが一般的です。
うちのカマドでは、「ツワブキ」と「ヨモギ」がよく使われています。
「ヨモギ」は皆さんご存知の、あの草団子に使われるヨモギです。こちらでは「モグサ」とも呼ばれています。
「ツワブキ」は「艶蕗」、普通のフキよりも葉っぱが固く、表面が艶々しています。こちらもフキ同様おいしく食べられます。
ヨモギはそのまま使用できますが、ツワブキは海女小屋のカマドで一度火にあぶってから、手で揉んで葉を柔らかくし、汁を出してから使います。火であぶらずに使用しようとすると、葉を揉んだ時にパリパリッと割れてしまい、汁も上手く出ません。
使い方は簡単。使用直前に葉を少し揉んで汁を出し、葉ごと押し付けるようにして磯メガネやゴーグルの内側のガラス面を磨くように汁をまんべんなく塗ります。
それからサッと海水で磯メガネの中を洗いすぐに磯メガネを装着します。これでOK!
歯磨き粉
それから個人的にオススメなのは「歯磨き粉」。
先輩海女さんに教えてもらって使い始めたのですが、ミント系の歯磨き粉を使えば目元がスッキリ爽やかになり、そのおかげか波酔いがしにくくなるという効果を発見しました!波酔いしやすい体質の私としてはとっても助かります。
もちろん、曇り止め効果もバッチリ!
使い方はチューブから5ミリくらいを出してそれを磯メガネの内側に付け、海水を少し入れたら歯磨き粉を少し溶くような感じで指でかき混ぜ塗り伸ばし、あとはもう海水でサッと中を洗い装着するのみ。
たまに失敗するとメガネのふちに溶け切らなかった歯磨き粉が残っていたりしますが、慣れれば綺麗に曇り止めをすることができます。
ただ注意しなくてはいけないのは、スクラブ入りの歯磨き粉はNGだという事。マイクロビーズでメガネの中が研磨されガラス面に傷が付いてしまいますし、近年話題のマイクロプラスチックを海に直接流すなんて、とんでもありませんしネ。
その他
あとは市販されている「曇り止め」ももちろん効果があります。
それに、「唾」も結構効果が高いです。漁の最中に曇ってきてしまった時などは、応急処置として唾を使って曇り止めとする事もあります。
こちらも他のアイテム同様、ガラス面の内側にまんべんなく塗り付けたら一度海水でサッと洗い流して装着します。
唾を使うなんて・・・とちょっと抵抗あるかもしれませんが、波のある時などはとても良い方法です。
磯メガネを海の上で外した状態で何か作業をするのは至難の業。片手に磯メガネ、片手にツワブキ、波を被って潮水が目にも口にも入って、目も開けられない状況なんて時だと、誤ってツワブキを海に落としてしまう事も(←単にドジなだけ)。
唾だとその点、海面での作業が楽です。片手が空くのでタンポをしっかりと掴み身体を安定させやすく、ペッとしてサッと、曇り止め出来ます。
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いかがでしたでしょうか。
海女って本当に色々と工夫をして漁をしているんだなといつも感心させられます。
ツワブキやヨモギ以外にもたくさん周りに草木がある中で、先人たちが試行錯誤の末に「これは使える」と選んだアイテムがこの2つなのでしょうね。
他にも石鏡で暮らしていると、生活の中で様々な野草や海藻を多用している事が分かります。なんでもない「雑草」と思っていたものが、急に名を持ち「薬草」「便利な野草」「伝統行事で使われる大事なアイテム」に代わるから不思議。
田舎暮らしって、本当に面白い。