海女5年目、新米海女のリッチャンです!
今回はこれから「海女になりたい」
と思っている女性たちに向けて
私のこれまでたどってきた道筋を
大まかにまとめて
どのような準備や心構えが必要なのかについて
ブログに書いてみようと思います。
はじめに
まずは改めて私の経歴と
自己紹介をしたいと思います。
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◆名前:リッチャン
◆年齢:33歳
◆家族構成:夫、猫3匹
◆生い立ちと経歴:
愛知県生まれ。父はエンジニア。
3人姉弟の長女。
県内の大学を卒業後名古屋のメーカーに就職。
結婚を機に退社→夫の住む三重県鳥羽市に移住(=おっかけ女房)。
移住後に海女を始め、今年で5年目。
海女の他に「ゲストハウス運営」と
「ハンドメイド雑貨の製作と販売」等を
しています。
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いわゆる「サラリーマン家庭」に育った私は
結婚するまで海やマリンスポーツが
好きだったわけではなく、
海女になったのは我ながら本当に不思議
なのですが
色々なご縁が重なったことによります。
会社員時代はオフィスでの事務仕事でしたので
今の仕事とは全く関係ない事をしていました。
海女になれた理由
私が海女になれたのは、
以下の条件が揃っていたためです。
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漁協組合員資格がある家に嫁いだ(※)
-
海女のある地域に移住した
-
近所の人が海女の師匠になってくれた
漁協組合員資格がある家に嫁いだ
よく「漁業権がある/ない」などと
言われますが、
実際には
「漁業権」は個人に付与されるものではなく、
各地域の漁協(漁業協同組合)に付与されます。
そして、漁協の組合員(メンバー)となる事で
各人に「漁業をする権利」が与えられます。
組合員の資格は「一家に一人」あれば
その家族全員が漁業に従事する事が出来ます。
そして組合員の資格は
代々受け継がれるものらしく、
組合員資格を有する家庭に生まれた跡取りは
親の持つ組合員資格を
そのまま引き継ぐことが出来ます。
漁師町に生まれ育った人ではない、
私のような他所の地域からやって来た人が
漁業をしたいと思った場合は、
本人がその地域の漁協の「漁協組合員になる」か
「漁協組合員一家の家族になる」という2つの選択肢があります。
そして私はこの場合の後者、
組合員資格を持つ男性と結婚し
家族になった事で漁業に従事する権利が
自動的に発生しました
(特に何か申請する事もなかったです)。
ただ住所が同じでないといけない
(= 一緒に同居する家族でないといけない)
などの条件があるので、
結婚しても別居していたり
住所が別々だと漁業は出来ません。
ちなみにうちの夫は名古屋出身。
元は彼も移住者だったので、
鳥羽市へ移住後(まだ私と出会う前)に
初代として漁協組合員資格を取る事になり
資格取得までにおよそ2年かかったと
言います。
移住してすぐに組合員になれる
わけではないのです。
海女のある地域に移住した
次に海女が出来る環境、つまり
海女がある(いる)地域に嫁いできた
という事も大きいと思います。
私の知り合いには海女のいない地域で
海女を始めた方もいますが
私の住む鳥羽市は日本で一番
海女の人数が多い地域です。
現役の海女が400人以上いる地域なため、
「海女になりたい」と思った時に
それを始める土台や環境が整っています。
特に私の暮らす鳥羽市石鏡町は
辺境の地にある小さな漁師町なため
漁業以外の職業選択の余地がほぼなく、
町民のうちほとんどの女性が現役
もしくは過去に海女を経験したことがあります。
全国的に見ると非常に稀有な事ですが、
女性が仕事を探そうと考えた時に
真っ先に職業選択のトップにくるのが
「海女」なんです。
近所の人が海女の師匠になってくれた
「海女になりたい」と思った時に、
まず押さえておかなくてはいけない
ポイントの一つに
「誰に海女を習うのか」という事があります。
別に目の前の海にとりあえず潜って
貝や海藻を採るだけなら
誰でもそれなりに出来てしまうものなのかも
しれませんが、
「海女になる」というのは
その伝統と文化を引き継ぐという
意味合いもあると思っています。
そのため、ちゃんと海女の先輩から
海女を習うことで
漁獲に関わる技術的な事だけではなく、
儀式やまじない、言い伝え、
海女としての考え方など
包括的に会得する事が可能になります。
私は自分が海女になろうかなと
意識する以前から
近所の方が頻繁に私に「海女」の事を
話して聞かせてくれていました。
海女になろうと思った時も
まずは彼女に相談をして
私の師匠になって欲しいとお願いしました。
お師匠のおかげで所属する
「海女小屋」もすんなり決まり
海女漁に必要な道具などもお古を
譲って頂けました。
海女の道具という物はダイビングショップや
釣具屋で買うことも出来ますが
やはり現役のプロたちが実際に使っているものの多くは手作りの品が多く
また知る人ぞ知る小さな漁具店や
個人からでしか買えない物も中にはあります。
そうした店や人の情報なども
先輩やお師匠経由でからしか得られないので、
海女の師匠を上手く見つけられたことは
すごくラッキーだったなと思います。
逆にお師匠なしで海女を始めた人たち
などに会うと
皆さん独学で海の地形を覚えたり
漁獲に必要な技術をゼロから身に付けていたり
大変な努力家である事に驚かされます。
海女の収入
海女を始めるに当たり、
絶対に考えて置いて欲しい事。
それは「収入」です。
海女という生業は海を職場としているため、
石鏡のような比較的「出日(=出漁日数)」
が多い地域でも
台風や強風、高波などの影響で
年間通して100日も海女漁に行けないと
言われています。
2015年の10月に海女を始めた私の場合、
1年目の年収はたったの30万円でした!
その後、2年目は50万円、
3&4年目は100万円、
5年目は150万円の年収でした。
この年収には海女漁以外にも
アルバイトやゲストハウスを始めたりして得た
副収入なども含めています。
30代で年収200万にもいっていないのは
正直やばいと思います。
生活はいつもギリギリで、
冬から早春にかけては収入源が乏しくなるので
銀行口座の残高がマイナスになることも
ありました。
私は元々体力もなく、天気の悪い日などは
海に行くのを嫌がって
仕事を休んだりすることも多かったので
他の海女と比べても収入は少ない方です。
ですが、特に海女を始めて1年目、2年目は
海女としてのスキルは低く、
ほぼ収入がない上にウェットスーツなどの
機材費がかかるので
経済的にかなり苦しくなることを
覚悟しておいて下さい。
「いつか海女になりたい」
と考えている方がいたら、
少なくとも200~300万円の貯金をしてから
移住する事をおすすめします。
支出に関しては食費や交際費などが
都市部での生活に比べて
全然かからなくなるので、
年収200万円以上あれば
一人暮らしをする分には十分。
300万円もあれば
結構たのしく暮らせると思いますよ。
海女を辞めた時期と理由
私は昨年の5月から3カ月間、
一度海女を辞めています。
理由はシンプルに「お金」で、
私の海女のスキルとレベルでは
どうしても生活が苦しく、
海女を3年経験した事で必要最低限の
知識と経験は身に付けたと考え、
いったん海女を辞めて
収入の安定した仕事をし
生活を立て直したいと思いました。
海女を辞めている間は月に25万円以上の
安定した収入を得られたことで
経済的、精神的なゆとりを得ることが
出来ました。
海女に戻ってきた理由
海女を辞めている間、
お金が手に入った喜びと同じくらい
ストレスを感じていました。
仕事で嫌なことがあった時など、
移住以前に会社員をしていた時は
なんとかやり過ごせたような案件も
海女のおばあさん達と毎日笑って
暮らしていた日々を知ってしまった後では
人間関係のイライラや
仕事と時間に追われる日々に対して
強い不快感を感じるようになっていました。
海女は自然環境に日々の仕事の有無を
左右される生業ですが
それ以外については誰もが平等で
自由裁量の多いフレキシブルな職場です。
海女小屋の仲間たちは
家族のような存在なので
その居心地の良さや温かさを思い出すと
途端に会社でスーツを着て仕事をしている
自分をつまらなく感じました。
この時に初めて私は心から
「海女になりたい」と思いました。
のんびりペースで気ままに海女をしていたため
に収入が少なかった私ですが、
辞めて初めて
「海女の世界に戻りたい」
と強烈に思うようになり
「海女に戻ったら今度は海女を辞めなくても良いようにきちんと海に行って必死になって稼ごう」
と思うようになりました。
海女になるためには
海女になるためには
「組合員資格の取得」といった
誰もがクリアしなくてはいけない課題
があります。
しかしそれも、
全部ひとりで一から開拓しなくてはいけない
場合もあれば、
私のような棚ぼたラッキーでなれる場合も
あったりします。
そして最近では漁業後継者の不足を
解決しようという目的から、
地方の自治体などが
「海女の後継者を募集します」と
ウェブサイトやSNSを通じて
公募する事もあります。
これはものすごいチャンスです!
地方自治体によるこうした取り組みの場合、
まず「海女になりたい人を求めている」
という点において
参入障壁が取り除かれていて
地域に入りやすいというメリットがあります。
移住後に住む家や世話役をかって出てくれる
人がいたりと、
新規参入者としてはサポート体制が
整っているので助かります。
しかし同時に、
こうした取り組みをしなくてはいけない、
つまり「切羽詰まった状況である可能性が高いかもしれない」という事も
意識しないといけません。
漁業者が減っているという事は
一緒に働く仲間や先輩が少なく
高齢化が進み過ぎている可能性が高いです。
移住をしても自分の周りに
友達になってくれそうな
若い人が全然いないかもしれません。
近隣の土地開発による海の汚染や
磯焼けが進んでいるせいで
たとえ海女になれても漁獲物が乏しく
生活できない可能性もあります。
こういった事はあまり情報として
表には出て来ませんので、
ぜひ現地に足を運び、自分の目で見て、
体感し、
色々な人たちに話を聞いて
実情をしっかりと把握しておいた方が
良いでしょう。
実際にその土地に行く事で
町の雰囲気も掴むことが出来ます。
「海女」とひと言に言っても土地によって人となりもルールも様々です。
ぜひ自分に合った土地とコミュニティーで
海女になる事を目指して欲しいと思います。
関連記事:
以前、こちらの記事では
「海女に向いている人/向いていない人」
というテーマでブログを書きました。
ブログで書いている
「海女に向いていない人」と言うのは
私自身も含めて
『人の倍以上努力しないと海女になれない人』
を意味しています。
「海女に向いていない」=「海女になれない」「諦めた方が良い」
という意味ではなく、
大変な事や苦労をする事も
多いかもしれないけれど
こつこつ努力して時間をかけて
自分を磨き上げれば
きっと私たちのような不器用な人間だって
一人前の海女になれると思います。
悔しいことや情けない思いをする事も
あると思います。
私のように「辞めたい」と思う人も
中にはいると思います。
でも、あせらず、でも諦めず、続ける事。
それが出来れば誰だって
海女になれると思っています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
あくまで個人の経験と感想ではありますが、
ひとつの例として参考にしてもらえたら
いいかなと思います。